合同会社の設立手続き(1) 法人成りのメリットと全体の流れと時間と費用

最終更新日 / 作成日 2015/12/18 / 作成者 資産運用の管理人

個人事業主で事業を営んでいましたが、事業規模が大きくなりすぎたので、節税と投資の効率化のため法人成りすることにしました。

通常、個人事業の法人成りは株式会社を選ぶ人が多いですが、今回は合同会社を選ぶことにしました。面倒な設立手続きの部分を人に頼むと5000円くらい余分にかかりますが、必要な機材が全部揃っていたので全て自分一人で設立手続きを行いました。

このページでは、まず最初に個人事業主が合同会社にするメリットとデメリットを説明した後に、実際に設立するための全体的な流れと時間、実際にかかった費用をざっくりと説明します。設立手続きの詳細については、別記事で誰でもできるように詳細に説明します。

個人事業主が法人成りするメリットとデメリット

法人成りのメリット

個人事業主が法人成りするメリットは大きく2つです。対外的な信頼度が増すことと節税できることです。

個人事業主の場合は個人的な都合でも廃業しやすいですが、法人の場合は廃業しにくいです。このため、個人よりも法人の方が全般的に対外的な信頼度が増して、事業を行いやすくなります。個人事業主でも十分事業を行いやすい分野(アフィリエイト等)もありますが、一般的には法人の方が信頼されやすいです。

次に、法人の方が節税しやすいことです。この節税効果が最も重要なメリットになります。ただし、事業所得が年間1000万円以下の場合、この節税効果は得られません。

個人でやっても法人でやっても、年間の利益が1000万円以下だと、どちらも同じくらいの税金を払うことになります。計算上は法人にした方が節税できますが、法人にした場合、社会保険料が大きくかかるので、それが実質的な税金になります。年間の利益が800万円よりも下回ると、個人の方が節税できる計算になります。

節税面の詳しくは個人事業主と法人の税金面の比較を参考にしてみてください。

年間1000万円の利益でも法人にした場合の節税額は実質年10万円くらいです。毎年確実に1000万円の利益が出れば法人化してもいいと思いますが、1000万円を切るようなことがありそうなら法人化しても金額面のメリットはありません。対外的な信頼度が必要な事業でない限り、法人にするだけ手間なのでおすすめしません。

利益が年1500万円くらいになると、節税目的で法人化した方がよくなります。

法人成りで所得を分散させると節税できる

利益が年2000万円以上になると、法人化は必須ですが、法人の利益を全て個人の所得にするのではなく、法人に利益をある程度残した方が節税できるようになります。

法人の利益が年2000万円以上になって、それを全て個人の所得にしてしまうと年2000万円を超えた部分は税率が50%(最大55%)かかってしまいます。税金で火だるまになります。ただし、法人の場合、税金火だるまをある程度回避することができます。

それは、法人に利益を残すことです。法人の所得の800万円以下は実効税率は25%ぐらいです。つまり、個人の所得にしてしまうと50%(最大55%)の税金が課せられるところ、法人に利益を残せば800万円までは税率を25%に抑えることができます。

ちなみに800万円を超える部分の実効税率は35%ぐらいになります。実効税率35%ぐらいになると、会社にお金を残すと会社を辞めるときに最後に逆に税金が高くなって節税にほとんどなりません。これは、会社のお金(利益剰余金)は、最終的には個人の所得になって、個人の所得税がかかるためです。

理想は、法人は800万円の所得にして、残りは個人所得が4000万円になるまで役員報酬で取り切ることです。個人所得が4000万円を超えると所得税が高くなるので、法人に800万円を残しても個人所得が4000万円を超えてきたら、超えた分は法人に残しておいた方が良いです。

個人事業主の場合の最大税率は60%(所得税45%+住民税10%+個人事業税5%)なので、年間の利益が1500万円を超えてきたら、法人化して法人と個人に利益を振り分けるのが最も節税できる方法になります。

所得が2000万円以下
→ 全額役員報酬

所得が2000万円超、2800万円以下
→ 2000万円を役員報酬にして、残りを法人に残す

所得が2800万円超、5000万円以下
→ 800万円を法人に残して、残りは役員報酬にする

5000万円超
→ 4200万円を役員報酬にして、残りを法人に残す

状況に応じて変わってくると思いますが、ざっくり計算すると上記のようになります。

法人成りのデメリット

個人事業主からの法人成りのデメリットは、法人の設立手続きが面倒なことと、廃業するときの廃業手続きが面倒なこと、それと事業収入が少ないと逆に個人事業主よりも税金が高くなることです。

現在個人事業主でない人で、最初から法人の設立をしようと思っている場合も同じです。

個人事業主の場合、事業を始めるのには開業届と青色申告承認申請書の2枚を提出すれば完了です。費用はかかりません。個人事業主を廃業するときも、廃業届を出せばいいだけです。これも費用はかかりません。

法人を設立する場合、提出する書類も増えて、費用も合同会社なら最低6万円,株式会社なら最低20万円かかります。廃業するときも提出する処理も増えて、時間も最低2か月くらいかかり、さらに費用も7万円くらいかかります。年間の収益が800万円を切ると、個人事業主よりも税金を実質的に多く払うことになります。

個人事業主にするか、法人にするかは、どれだけ長い期間、収益を維持できるかがポイントになります。毎年1500万円以上の収益を上げられそうな場合、または単年でも2000万以上収益が上がってしまう場合に、法人を選択肢にするという感じになります。

株式会社より合同会社にするメリットとデメリット

法人というと株式会社をイメージする場合が多いですが、合同会社も法人です。株式会社と合同会社の違いは、株式会社は株式で会社を所有するのに対して、合同会社は持分で会社を所有します。合資・合名会社というのもありますが、無限責任を負うので、一般的ではありません。

ここでは株式会社より合同会社にするメリットとデメリットを説明します。

株式会社より合同会社にするメリット

合同会社の設立手続きは、株式会社よりも簡単なのに加えて、設立にかかる費用も最低6万円に抑えることができます。株式会社の場合は、設立にかかる費用は最低20万円になります。これが合同会社にする一番大きなメリットです。

株式会社は毎年決算公告する必要がありますが、合同会社にはその義務はありません。決算公告の費用は6万円くらいかかります。電子公告にすると年間費用は五千円くらいに抑えることができますが、いずれにせよかかります。そのため多くの株式会社は決算公告の義務を無視しています。合同会社の場合、決算公告の義務はないので、費用も発生しません。

株式会社より合同会社にするデメリット

合同会社の場合、上場できません。合同会社が上場したい場合、株式会社になってから上場する必要があります。

株式会社より合同会社にするデメリットは基本的に上場するときくらいです。あとは、合同会社は一般的な知名度が低いので、人を雇う上で、人を集めにくいかもしれません。そのほかには、普通の人に株式会社の社長していますと言った方が、対面が良くなる気がする、それくらいです。

社員を何十人も雇って、大きな会社にしたい場合は、株式会社の方がいいと思います。こじんまりとした会社で事業を続けたい場合は、合同会社がおすすめです。

途中で合同会社から株式会社に変更することもできるので、最初は合同会社から始めて、もし事業規模が大きくなりすぎて、株式会社の方が組織上良い場合は、株式会社に変更するというのが一番妥当な方法だと思います。特に、一人会社の場合は、合同会社をおすすめします。

合同会社の設立手続きの全体の流れと時間、かかる費用

合同会社の設立に必要な手続きの流れと時間、そしてかかる費用をざっくりと説明します。詳細は別ページにて記載します。

会社名(商号)を考える

ネットで商号調査するのに30分

会社の実印を注文して届くのに2日〜3日。個人の実印を持っていなければ、個人の実印も注文する。(実印1個、一番安くて2000円くらい)

実印の注文と同時進行で、電子定款の作成を開始します。

まず普通に定款を作ります。定款ができたら、法務局へ行き、項目に間違いがないかチェックしてもらいます。

問題がなければ、定款を電子定款にします。

電子定款と登記すべき事項用にCDRをとりあえず4枚用意しておきます。必要なのは2枚ですが、失敗や変更した場合の、予備として余分に用意しておくことをおすすめします。CDR1枚50円として、200円。パソコンとCDRを焼けるDVDドライブ(2500円)が必要です。

電子定款は人に頼むと5000円、自分でやると個人番号カードと2500円程度のICカードリーダーが必要です。住基カードを持っていて有効期限がまだある電子証明がある場合は、個人番号カードの代わりに使うことができます。現在、個人番号カードの発行には数ヶ月時間がかかるので、個人番号カードも住基カードも持っていない場合は、人に頼むことになります。

個人番号カードや有効期限内の電子署名付きの住基カードを持っていて、パソコンにある程度詳しければ電子定款を自分で作ることも可能です。ただし、相当手間がかかるので、基本的には人に頼んだ方がいいです。

電子定款を自分で作る場合は、四苦八苦しながら半日くらい時間がかかります。人に頼むと2,3日で作ってくれるそうです。

電子定款が用意できたら、個人の印鑑証明書を役所からもらいます(300円)。個人の実印の印鑑登録をしていない場合は、個人の実印が届いたら、市役所などで実印の登録をする必要があります。

その他に必要な書類を揃えます。パソコンとプリンターがあれば、必要な書類は簡単に作れます。

電子定款をCDRに焼いて、登記すべき事項もCDRに焼きます。

払込を証明するのに、一度銀行から資本金額を引き出して、入金します。通帳に記帳して、入金がわかるページをコピーしたものを提出する必要があります。

法務局へ持って行き、書類を確認してもらってから、登記します。この時に6万円かかります。

登記が完了するのに8日間必要なので待ちます。登記で何か問題があれば、電話がかかってくるので、この電話には必ず応じましょう。場合によっては、修正するために少し時間がかかる場合があります。

会社の設立日は、登記が完了した日ではなく、登記手続きをした日になります。

登記が完了したら、税務署などの役所巡りをして、必要な開業書類を提出していきます。(1日から2日)

完了です!

面倒なのは電子定款の作成だけ

合同会社の設立は上記の流れになっていて、面倒くさく見えるかもしれませんが、実際に面倒な箇所は電子定款の作成箇所くらいです。それ以外は、すでにネットにも情報が出回っているので、それを真似れば、ほとんど問題ありません。

電子定款の作成だけは面倒です。ネットで調べれば、5000円くらいでやってくれる人がいるので、普通はそこに頼んだ方がいいです。今回は、電子定款まで自分で作成しています。

最速でやれば、法人の設立を思いついてから3日で登記手続きまで持っていけます。電子定款を人に作ってもらう場合は、余分に1,2日かかると思います。

費用は登記の6万円と、細かい費用(実印、印鑑証明書、CDR)です。電子定款を人に作ってもらう場合は5000円くらいかかって、自分で作る場合は最低1000円かかります。

CDRを焼くためのDVDドライブを持っていない場合は、2500円程度で買う必要があります。自分で電子定款を作る場合でICカードリーダーを持っていない場合は、2500円くらいでICカードリーダーを買う必要があります。

続きの記事 → 合同会社の設立手続き(2) 商号調査と印鑑作成

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