合同会社の設立手続き(3) 定款と電子定款の作成の仕方+資本金の入金の仕方

最終更新日 / 作成日 2016/02/15 / 作成者 資産運用の管理人

合同会社の設立手続き(3)では定款を作成して、法務局で確認してもらって、それを電子定款にします。最後に資本金を入金します。

定款を作成すること自体は簡単です。30分もあれば作成できます。問題は電子定款です。正直めんどくさいです。電子定款の部分は5000円くらいかかりますが、人に頼んだほうがいいです。

定款と電子定款の違いと、どちらを選ぶべきか

合同会社を設立するときに、定款を法務局に提出する必要があります。提出できる定款は、普通の紙の定款とCDRにPDFファイルで保存した電子定款があります。普通の紙の定款だと印紙で4万円払う必要があるのですが、電子定款だと4万円の印紙を払う必要はありません。

電子定款を選ぶと合同会社の設立費用の合計は6万円です。普通の紙の定款を選ぶと4万円の収入印紙を払う必要があるので、設立費用の合計は10万円になります。このため、設立する会社の大半は電子定款を選んでいます。今回の合同会社の設立手続きも、電子定款で行います。

電子定款を自分で作成するべきか、人に頼むべきか

電子定款をする場合でも、自分で電子定款を作成するか、インターネットなどで人に電子定款を作成してもらうかの二通りがあります。

自分で電子定款を作成する場合、Windows 7/8/10が入っているパソコンが必要になります。それと2000円程度のICカードリーダーが必要です。その他、体験版のAdobe Acrobat DC proと各種プラグイン(無料)が必要になります。さらに署名用電子証明書を付加した個人番号カードまたは住民基本台帳カード(有効期限内の電子署名)が必要になります。

自分で電子定款を作成する場合、とても面倒くさいです。WindowsパソコンとICカードリーダー、有効期限内の電子署名付きの住基カード/個人番号カードが手元にあればチャレンジしてもいいと思いますが、いずれかを持っていない場合は、早々に諦めて電子定款の部分は人に頼んでやってもらったほうがいいです。人に頼めばだいたい5000円くらいでやってくれます。

信頼できそうなところもわからず、必要なものは揃っていて、できるだけ早く設立手続きをしたかったので、今回は人に頼まずに自分で全てやってしまいました。

電子定款の作成

電子定款の作り方: 必要なものを揃えます。注文したり、個人番号カードを用意するのに時間がかかるので、その間に定款を作成します。紙の定款を作成したらそれを持って近くの法務局へ行き担当の人に確認してもらいます。定款に問題があるようなら修正します。その後、パソコンで電子署名をするソフトウェア的な下準備をしておきます。必要なものが全て揃ったら、定款を電子定款にします。

これが電子定款の作成の大雑把な流れになります。下記から具体的なやり方を説明していきます。

1.必要なものを揃える

用意するのに一番時間がかかるのもは個人番号カードです。マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に電話をかけて聞いてみたところ、個人番号カードの発行には2016年2月現在だと2ヶ月半かかるそうです。びっくりぽんです。今はマイナンバー制度が始まったばかりなので申請が殺到していて時間がかかるけど、時間た経つにつれて3週間くらいに短縮されるそうです。それでも3週間・・・。(追記:アホな発行システムだったため、時間が経っても、発行には3ヶ月くらい時間がかかるようです)

住民基本台帳カードなら当日中に発行してもらえたのですが、住民基本台帳カードの発行はすでに終了していて、これからは個人番号カードでの申請になります。住民基本台帳カードを持っていても電子署名が有効期限切れの場合は使えません。この場合も個人番号カードが必要になります。

すでに個人番号カードを持っている人や、時間に余裕がある人は個人番号カードの発行をして待つのもいいかもしれませんが、それ以外の人は自分で電子定款を作るのは諦めてください。ネットで電子署名 代行 合同会社で調べて5000円くらいのところに電子定款の作成を頼んでください。

個人番号カードを持っている場合でも電子定款を作る場合は、Windowsパソコン(Windows 7/8/10)が必要になります。Windowsパソコンを持っていない場合も、諦めて電子定款の作成は人に頼んでください。

自分で電子定款を作成しようと思っている人は下記の必要な機材を用意してください。(個人番号カードを持っていない人は個人番号カードの発行手続き最初にしてください)

必要なのはICカードリーダー、DVDドライブです。Amazonなどで注文すれば2日程度で届くと思うので急ぐ必要はありません。

・DVDドライブ 2700円くらい
ASUS バスパワー対応ポータブルDVDドライブ SDRW-08D2S-U LITE

・ICカードリーダー 3000円くらい
SONY 非接触ICカードリーダー/ライター PaSoRi(パソリ) RC-S380

ちなみに電子定款を代行してもらう場合はICカードリーダーは必要ありません。代行してもらう場合でも普通は電子定款のPDFファイルをEmailで送ってくるので、電子定款をCDRに保存するのにDVDドライブが必要になります。(手数料払って、代行の人にCDRで電子定款を送ってもらえる場合もあります)

2.定款を作成する

電子署名を代行してもらう場合は、基本的に定款のサンプル(雛形)も代行業者からもらうことができるので、自分で最初から作成する必要はありません。代行を頼む場合は、代行業者の指示に従って定款を作成してください。

ここでは、代行業者に頼まずに、一人で定款を作成する方法を説明します。作成と言っても、下記の雛形を埋めれば30分くらいで作成できます。考える必要があるのは事業目的くらいです。

事業目的は、会社定款の事業目的検索(サンプル・記載例)を参考に記載すれば問題ありません。

インターネットで検索すれば定款の書き方はたくさん出てきます。それぞれ若干記述が異なりますが、定款に記載しなければならない必須事項が6個あります。

6個の必須事項は、商号、事業目的、本店の所在地、社員の氏名または名称および住所、社員全員が有限責任社員である旨、社員の出資の目的およびその価額または評価の標準です。出資の目的はわかりにくいですが、出資の種類です。例えば現金(金)とかを言います。

下記は実際に法務局に提出した時の合同会社の定款になります。社員は一人です。〇のところは各自埋めてください。

〇〇〇合同会社 定款

平成〇〇年〇〇月〇〇日 作成
(↑作成日は記載しなくてもOK)

                        第1章 総 則

(商号)
第1条 当会社は、〇〇〇合同会社と称する。

(目的)
第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。
   1 事業目的
   2 事業目的
   3 事業目的
   4 前各号に附帯または関連する一切の業務

(本店の所在地)
第3条 当会社は、本店を〇〇県〇〇市に置く。 
(所在地は区や市まで、全部の住所は入れません)

(公告の方法)
第4条 当会社の公告方法は、官報に掲載する方法により行う。
(電子公告の方法もありますが、URLの記載が必要なので、合同会社の場合は官報がオススメです)


                     第2章 社員及び出資

(社員及び出資)
第5条 当会社の社員の氏名及び住所、社員の出資の価額は次の通りとする。
     金〇〇〇万円 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇番地
     有限責任社員 〇〇 〇〇
(住所は全部の住所を記載します)

(社員の責任)
第6条 当会社の社員の全部を有限責任社員とする。

 
               第3章 業務の執行及び会社の代表

(業務執行社員)
第7条  当会社の業務は、社員〇〇〇〇が執行する。

(代表社員)
第8条  当会社の代表社員は、社員〇〇〇〇とする。


                      第4章 計 算

(事業年度)
第9条 当会社の事業年度は、毎年〇〇月〇〇日から翌年〇〇月末日までとする。


                     第5章 附 則

(定款に定めのない事項)
第10条 本定款に定めのない事項は、すべて会社法その他の法令に従う。

〇〇〇合同会社設立に際し、本定款を作成し、社員が次に電子署名する。

平成〇〇年〇〇月〇〇日

有限責任社員  〇〇 〇〇

自分以外にも社員がいる場合は、その人の名前や住所、出資額なども記載します。社員が複数いる場合は、社員の加入や退社に関することを記載する場合も多いです。定款は会社のルールを明文化したものです。6個の必須事項を記載しておけば登記は問題ありません。それ以外の記載事項は必要ないのですが、会社内で争い事が発展した時に、定款に記載されている方法で対処する感じになります。

一人会社の場合は、争い事も何もないので、上記のサンプルのように書けばいいと思います。

公告の方法は記載事項ではないので、記載する必要はないのですが、ほとんどのサンプルで記載されているので記載しておきました。

公告の方法ですが、電子公告にする場合は電子広告をするためのURLを記載する必要があります。URLがないと定款では跳ねられませんが、電子定款と一緒に提出する登記すべき事項の記述で問題が発生して登記できなくなると法務局の人が言っていました。

電子広告にするメリットは、株式会社だと決算公告を毎年官報に掲載しなくて良くなるので節約できます。合同会社の場合、決算公告をする必要がないので、官報を選んでおいたほうが簡単です。

3.法務局で確認してもらう

定款を作成したらプリントして、近くの法務局(または出張所)へいき、定款の中身を確認してもらいます。代行の人に定款を作ってもらっている場合は必要ないと思いますが、代行を使わずに自分で定款を作る場合は電子定款にする前に法務局での確認は必須です。

設立登記をするのに、定款以外の書類も必要ですが、一緒に持って言って確認してもらうことをおすすめします。定款以外の書類は、次回の記事で説明します。

法務局で確認してもらう時の注意点は、法務局の人の目は節穴だということです。一度、法務局の人に定款を確認してもらって問題ないと言われたのですが、いざ電子定款を作って提出したところ、記述に問題があるところ(公告の仕方)があり、電子定款の作り直しを余儀なくされました。

少しでも疑問点や不安な箇所がある場合は、その箇所をピンポイントで聞くのを強くすすめます。法務局の人は丁寧に確認せずに、ざっくり見て判断してしまう人がいるので注意してください。

4.電子定款を作成する

電子定款を作るのには、Acrobat Standard/Pro DCが必要になります。普通に買うと3万円くらいかかりますが、30日間の体験版でも電子定款を作ることができるので実質は無料で使えます。

Acrobat 製品のダウンロードからAcrobat Pro DC(Classic)をダウンロードします。または、Acrobat Pro DCの永続ライセンス無償体験版をダウンロードしてインストールしてください。

30日間の無料体験の期間が過ぎると使えなくなるので、その間に電子定款を作ります。一度インストールするとインストール情報が保存されてるので、たとえ削除しても同じ体験版は使えないので注意してください。

Acrobat Pro DCをインストールしたら、PDF署名プラグイン(個人番号カード対応版/住民基本台帳カード対応版)、そして公的個人認証サービスの利用者クライアントソフトをダウンロードしてインストールします。

PDF署名プラグイン
公的個人認証サービス:利用者クライアントソフトのダウンロード

次に、定款をPDFファイルとして保存します。WordなどのドキュメントファイルをPDFとして保存すれば、PDFファイルの定款が出来上がります。このPDFファイルに電子署名することで電子定款が出来上がります。

Acrobat Pro DCを起動します。

起動したら、ツールというタブをクリックして、ツールに証明書を追加します。追加すると、証明書のところが“追加”から“開く”という表示になります。

続いて、PDF署名プラグインの設定を行います。

編集 → 環境設定 → 一般

分類から署名を選択して、作成と表示方法の詳細をクリックします。デフォルトの署名方法をSignedPDFにして、デフォルトの署名形式をを上記の画像のように設定してOKをクリックします。

続いて、おそらく必要なかったと思いますが、念のため検証の詳細もクリックします。

署名検証を上記のような設定にしてOKをクリックします。

続いてSignedPDFの設定をします。

編集 → 環境設定 → SignedPDF

公的個人認証ICカードを選択して設定を上記のようにしてOKをクリックします。

これで電子署名する準備ができました。定款のPDFファイルを開きます。PDFファイルの最後の方に電子署名をします。ツールの証明書をクリックします。

電子署名をクリックして、電子署名したいところにマウスで四角くドラッグします。ドラッグを離すと、“電子署名を行います。よろしいですか?”というウインドウが出てきます。はい、を選択します。

ICカードリーダーをパソコンにつなげます。そして、ICカードリーダーの上に個人番号カード(または住基カード)を置きます。自分の名前を入力して、署名地は自分の住所、そして個人番号カードの電子署名のパスワードを入力します。理由の箇所は、“私はこの文章の作者です”を選べばいいです。

ICカードリーダーがちゃんと認識されていて、パスワードが合っていれば、OKを押せば電子署名が完了です。これをPDFファイルで保存すれば、それが電子定款です。PDFのファイル名はわかりやすく、Teikan.pdfにしておけばいいと思います。

最後に、電子定款(Teikan.pdf)をCDRに焼いて完了です。これを法務局に提出します。CDRにはわかりやすく油性ペンで会社名+電子定款と記載しておきましょう。

資本金を入金する

資本金の入金には順番があります。

正しい順番
電子定款を作成

資本金を入金

間違った順番
資本金を入金

電子定款を作成

法務局の人に聞いたのですが、入金する順番をやたらと強調していました。資本金を入金した後に電子定款を作成すると非常にまずいそうです。

資本金が300万円なら、300万円を入金する必要があります。残高が300万円でもダメです。300万円の入金の記録が必要になります。複数人で合同会社を作る場合は、複数の入金が必要になります。誰から入金されたかは重要ではなく、それぞれ出資する額で入金を行う必要があります。

通帳に入金の記録(記帳)して、とりあえずは資本金の入金は完了です。あとで、入金の記録がわかるようにその部分をコピーします。

これで定款と電子定款の作成の仕方と資本金の入金の仕方の説明は完了です。次回は、その他に必要な書類を作成して法務局で登記するまでを解説します。

続きの記事 → 合同会社の設立手続き(4) 法務局での登記と税務署などへの届け出

前の記事 → 合同会社の設立手続き(2) 商号調査と印鑑作成

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