個人事業主と法人の税金面の比較、厚生年金の悪夢

最終更新日 / 作成日 2014/11/22 / 作成者 資産運用の管理人

個人事業主と法人では税金面でどちらがより節税できるかを比較してみました。

結果から言ってしまえば、年収1000万円以下なら個人事業主のほうが良いです。全ては、払い損の厚生年金のせいです。

前提条件

個人事業主 1人
法人の社長 従業員なしの社長1人

個人/法人で共通する節税・税額控除
小規模企業共済 84万円
基礎控除 38万円

個人事業主の場合
青色申告特別控除 65万円

法人の場合
給与所得控除 65万円 (給与所得により控除額が上がる)

厚生年金保険料の半分は税金とみなす。
厚生年金は払い損のため、10万払ったら5万戻ってくる程度になる。そのため厚生年金保険料の半分を税金として換算する。

国民年金保険料 15,250円
国民年金は10万払って10万戻ってくる感じになるので今回の計算では省略する。ただし所得税と住民税の計算では計算(控除)の中に入れる。

国民健康保険料 43,200円 + (合計所得-33万円) ✕ 8.47%
40歳から64歳の場合、この国民健康保険料に介護保険料として15,400円 + (合計所得-33万円) ✕ 1.57%加算されるが今回は省略する。国民健康保険料は市区町村によって異なるが、今回は上記の例で計算することとする。なお合計所得は控除前の所得のことをいう。

社会保険の健康保険料も40歳から64歳の場合に必要な介護保険料分をを無視して計算することとする。

住民税は10%として、均等割は無視する。
個人事業税は5%とする。

所得別の税金

売上から費用(給料は除く)を引いたのを所得として、
所得別に税金額の合計を算出します。

法人の社長の場合
所得金額から社会保険の折半額を引いた額を給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額)とする。

所得金額180万円の税金負担額

個人事業主
所得税0円+住民税0円+事業税0円+健康保険167,709円
個人事業主の合計167,709円

法人の社長
所得税0円+住民税0円+法人税均等割70,000円+厚生年金税金157,260円+健康保険179,460円
法人の社長の合計406,720円

法人の社長のほうが年間239,011円も税金を多く払うことになる。

所得金額300万円の税金負担額

個人事業主
所得税33,882円+住民税67,765円+事業税5,000円+健康保険269,349円
個人事業主の合計375,996円

法人の社長
所得税0円+住民税0円+法人税均等割70,000円+厚生年金税金272,594円+健康保険311,064円
法人の社長の合計653,658円

法人の社長のほうが年間277,662円も税金を多く払うことになる。

所得金額500万円の税金負担額

個人事業主
所得税153,325円+住民税250,825円+事業税105,000円+健康保険438,749円
個人事業主の合計947,899円

法人の社長
所得税51,239円+住民税102,478円+法人税均等割70,000円+厚生年金税金429,858円+健康保険490,524円
法人の社長の合計1,144,099円

法人の社長のほうが年間196,200円も税金を多く払うことになる。

所得金額800万円の税金負担額

個人事業主
所得税572,330円+住民税499,915円+事業税255,000円+健康保険692,849円
個人事業主の合計2,020,094円

法人の社長
所得税179,706円+住民税277,206円+法人税均等割70,000円+厚生年金税金650,033円+健康保険813,552円
法人の社長の合計1,990,497円

法人の社長のほうが年間29,597円の税金が安くなる。

この段階で厚生年金税金も支払限度額に達しているため、これ以上所得が上がっても厚生年金税金は一定のままになる。個人事業主の健康保険料の支払い限度額に達したと仮定して、これ以上所得が上がっても個人事業主の健康保険料は一定とする。

所得金額1,000万円の税金負担額

個人事業主
所得税952,330円+住民税689,915円+事業税355,000円+健康保険692,849円
個人事業主の合計2,690,094円

法人の社長
所得税452,815円+住民税440,157円+法人税均等割70,000円+厚生年金税金650,033円+健康保険993,012円
法人の社長の合計2,606,017円

法人の社長のほうが年間84,077円の税金が安くなる。

所得金額1,000万円を超えてから、法人の社長のほうが税金面で目に見えて有利になっていきます。所得金額1,500万円を超えると法人の社長の健康保険料が最高限度額に達するので、所得金額1,500万円得ると法人の社長が更に有利になります。

個人事業主と法人の税金面の結論

厚生年金さえなければ法人化がお勧めですが、厚生年金が所得1000万円以下での法人化をダメにします。

年間確実に1000万円以上利益が出る場合でも、法人化の節税面でのメリットは少しだけで、割と大きなデメリットがあります。

そのデメリットというのが、法人化すると役員報酬の額を変えられなくなるので、売り上げが期中で激減したりすると、役員報酬を変えられず余計に多くの税金を支払うことになるというものです。

結論:年1500万円の利益で法人化を検討すべき

法人化のデメリットは年1000万円以下だと個人事業主の方が節税できること、そして法人だと役員報酬を変えられないので、期中で売り上げが激減したりすると役員報酬を変えられないため余計に多くの税金を支払うことになることです。

ただし、これも年1500万円以上の利益になると、節税面のメリットが法人化のデメリットを上回ります。

節税を邪魔していた法人になった場合の健康保険料の最高限度額が、年収1500万円くらいで頭打ちになります。課税所得が1800万円以上になると、所得税率が40%(+住民税10%)になりますが、法人にお金を残せば年800万円までなら法人税で25%くらい取られるだけです。

その他にも年収1500万円くらいになると、効果的に節税できる方法が出てきます。年収が増えれば増えるほど、節税効果が高まり、数百万円くらいの違いが出てきます。法人化のデメリットを吹っ飛ばします。

年収1000万円以下なら個人事業主です。

年収1000万円超から1500万円以下でも個人事業主です。もう少し頑張れば法人化できるかな?くらいを考えるだけです。

年収1500万円超から1800万円以下なら法人化します。少し様子を見つつ法人化の準備を進めて法人化です。

年収1800万円以上(課税所得1800万円以上)なら法人化しないと基本バカです。超特別な理由でもない限り、法人化しないと税金を高く払うだけです。

個人事業主で年収1800万円以上でも、消費税の免税期間が残っている場合は、免税期間の間だけは個人事業主のままでいた方が少しだけ良い場合もあります。ただ、よっぽどのことがない限り、年収1800万円以上になると、消費税の免税期間を無視して法人化した方がトータルで節税面で有利になるのが一般的です。

法外な社会保険さえなければ、みんな法人化しようという話になるのですが、社会保険が話しをややこしくします。

以上、『個人事業主と法人の税金面の比較、厚生年金の悪夢』でした。

続きの記事 → 法人の解散のきっかけ、年金事務所の見回り

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